6月24日発売の中日新聞記事に浅間山の火山噴火して一週間の記事が載りました。ご覧ください。
長野、群馬県境の浅間山(2、568メートル)のごく小規模な噴火から1週間がたった。噴火は19日にも確認され、夏山シーズンを前に、麓の観光関係者は火山活動の推移を見守っている。そんな中、火山と正しく向き合ってもらおうと、登山口近くの旅館「高峰温泉」は、独自に分析した情報を宿泊客らに積極的に伝える活動を続けている。
「想定内の噴火。風評被害を気にするよりも、安全安心を第一に考えたメリハリある規制が必要だ」
六年ぶりの噴火となった十六日午後、小諸市にある火口から六キロ離れた旅館のフロントで、後藤英男社長(53)は方眼紙に自分で書き込んだデータを示しながら、落ち着いた様子で説明した。
四月ごろから温泉をくみ出す地下ポンプが一日に何度も止まるようになり、火山ガス成分が影響していると推測していた。五月二十七日の鹿児島県の口永良部(くちのえらぶ)島噴火後、浅間山と箱根山(神奈川、静岡県)の火山性地震のデータを集めると、箱根山は地震の数が減ったのに対し、浅間山は増えていることが判明。異常を感じて六月九日に小諸市に報告。二日後、気象庁は浅間山の噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)に引き上げた。
後藤社長が火山のことを知ろうと思ったのは、二〇〇四年九月に浅間山で小規模なマグマ噴火が連日発生した時だ。宿泊キャンセルの電話が相次ぐ中、気象庁発表の火山性微動と火山性地震の違いが理解できず、「お客さんのためにもこのままじゃいけない」と思ったからだ。
これ以降、七カ月間の気象庁データを方眼紙に書き込んで傾向を分析し、マグマや火山ガスのことも勉強した。宿泊客に天気や風向きを踏まえ、どこまで安全に登山できるか具体的に伝えている。
噴火から一週間。客の問い合わせに「規制範囲内での噴火なので安心してください」と説明している。キャンセルは三十件あったが、日を追うごとに減ってきているという。
「火山と向き合うには火山から学ぶべきだ。火山大国の日本で暮らしている以上、多くの人にうまく付き合ってほしい」。後藤社長はこんな願いを込め、登山者のためにきょうもデータを集めている。
(北村希)
中日新聞プラス